歯周病の体全体への悪影響とは?

歯周病は体全体の健康上のリスク

 歯周病や歯根の先の病変は、バイオフィルム(口の中ではプラークのことをいい、歯の表面に細菌が層をなして堆積し、ヌルヌルになったもので虫歯と歯周病の原因になっています。)によって生じる慢性炎症です。膿んでいる部分の面積を合計すると、重度のケースでは手のひらほどになるといわれます。このため歯周病を放置していると、体全体の健康上の大きなリスクにもなります。慢性の炎症状態によって、細胞が出すホルモン(サイトカイン)は高い濃度で血中を流れる状態(高サイトカイン血症)が続きます。大ケガをすると全身にショック症状が出るように、ダメージはそのケガの場所にとどまりません。慢性炎症は歯の周りに限定されていますが、炎症に関わる様々な物質が血液を通して全身に大きな影響を与えるのです。

心疾患への影響

 昔から心臓弁膜症(胸に耳を押し当てたときに聞こえてくるドキドキという音は心臓弁が閉じるときの音です。この心臓弁の働きが悪くなった状態を「心臓弁膜症」といいます。)のある人や人工弁の手術をした人は、血流中に入った口の中の細菌で心臓の弁が侵されやすい(感染性心内膜炎)ことが知られていました。心内膜炎の多くは、お口の中の細菌(緑色レンサ球菌)が血管に入ったものなのです。この細菌の固まり(プラーク)は、血管の中を流れて、脳梗塞などの原因になります。このため心臓病の人は、人一倍プラークコントロールに注意をしなければなりません。また抜歯、抜髄など出血が避けられない処置では、手術の前に抗生剤を服用する必要があります。
 心臓病の既往のない人の場合、歯周病をもっている人が心疾患(冠状動脈系)にかかる確率は、歯周病のない人の1.72倍(50歳未満の場合)というデータがありますが、多くの人がかかっている歯周病と罹患率の低い(成人の0.2~0.3%程度)病気を関連づけるのは難しいとはいえ、歯周病は心疾患の一つのリスク因子であるといえそうです。

糖尿病、動脈硬化から胎児の健康まで

 糖尿病が歯周病の大きなリスク因子であることはよく知られていますが、反対に歯周炎が糖尿病のリスクにもなっているらしいのです。ひどい歯周炎の患者さんでは血糖値の高い人が多いことがわかっています。慢性の炎症が血糖値のコントロールをじゃまするらしいのです。機械的にバイオフィルムを除去して抗菌薬を使った実験で、血糖値が改善したというデータもあり、効果のほどは不確かですが、糖尿病に悩んでいる人は、歯周病も治すべきです。
 動脈硬化も歯周病との関係で糖尿病に似ています。歯周病が動脈硬化や糖尿病を招くだけでなく、動脈硬化や糖尿病が歯周病を悪化させるという関係です。動脈硬化は偏食や運動不足だけでなく、血管内に炎症に関係するホルモンや細菌が流れ込むことによって引き起こされます。
 肥満、高血圧症、動脈硬化症、糖尿病、そしてここに歯周病を加えるべきですが、これらの病気は、偏食や精神的ストレス、運動不足などに関係しているので生活習慣病といわれています。この生活習慣病のそれぞれは軽度でも複数のものがいっしょになると治りにくく、さらに複合して心臓病の原因になります。
 歯周病は胎児の健康にも大きな影響を与えているようです。実際に早産や低体重児出産の確率を高くしているデータもあり、妊娠中の喫煙以上に胎児に悪影響を及ぼす危険があるのです。

そんなに危険なら悪い歯は全部抜いてしまいたいなんて早合点しないでください。これは、リスク因子のひとつになっているというお話です。この種の話題には、治療の大切さを強調するあまり、全身への影響を過大に表現している例も少なくありません。しかし、歯周病の体全体への影響は無視できないことはご理解願います。


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